バイオテクノロジー投資!15兆円規模に拡大する日本市場を解説

日本では昔から発酵技術(味噌や醤油を作る技術など)や、生物の設計図を読み解くゲノム解析の分野で市場が広がっています。
しかし、体に悪影響がないか心配する消費者の声や、担当する省庁によって異なる規制が効率的な発展の妨げとなっているのが現状です。
本記事では、成長を続けるバイオテクノロジー市場の基本的な仕組みと、投資のチャンスについて解説します。
バイオテクノロジーとは?

医療分野では、遺伝子治療や再生医療が進展し、農業の世界では病気や害虫に強い作物を開発することが可能になっています。
さらに、バイオテクノロジーは医療や農業だけでなく、食品製造、環境問題の解決など、多様な分野で活用されているのです。
バイオテクノロジーの主要分野と応用例

医療分野:幹細胞を利用した組織や臓器の再生
幹細胞(体の様々な細胞に変化できる特殊な細胞)は、自分自身で増殖しながら必要な種類の細胞へと変化する能力を持っています。そのため、体内で失われた細胞や組織を補うことができるのです。
このような特性から、患者さん自身の細胞を使った治療が可能となり、体が異物を拒否する反応や副作用のリスクを減らせる利点があります。
さらに、幹細胞を使った技術には、移植用の臓器が足りないという問題を解決する可能性も秘められているのです。
農業分野:病害虫耐性、栄養価向上作物
従来の農薬や化学肥料に依存した農業方法は環境への負担が大きく、作物の収量や品質にも限界がありました。一方で、バイオテクノロジーを活用すれば、生物の遺伝情報を直接変更して、特定の病気や害虫に強い作物を作ったり、栄養価を高められます。
例として「Bt作物」と呼ばれる遺伝子を改良した作物が挙げられます。
土壌中に存在する細菌「バチルス・チューリンゲンシス(Bt)」が作り出す成分を、作物自身が生み出せるように改良したものです。
改良された作物は特定の害虫から自らを守る力を持つため、農薬の使用量を減らすことが可能になりました。結果として、環境への悪影響も少なくなっています。
産業分野: 食品、医薬品、バイオ燃料の生産
食品分野では、生物の遺伝子を人工的に変える「遺伝子組み換え技術」や微生物の働きを利用する「発酵技術」が活用されています。例えば、細胞から肉を作る「培養肉」は環境に優しく新しいタンパク源です。
また、小さな微生物を使って自然由来の甘味料を効率よく生産する取り組みも進行中です。
医薬品分野では、糖尿病治療に使われる「ヒトインスリン」やがんの治療薬などが遺伝子組み換え技術によって効率的に作られるようになりました。
海洋分野:抗がん剤、抗炎症剤の開発
海洋環境は、陸上とは違う厳しい条件(高い水圧、低い温度、塩分の多さ)で進化してきた生物たちが作り出す物質が特徴的です。がんの治療薬や炎症を抑える薬の研究分野では、これらの海の物質が今までにない働き方をする可能性が高いと考えられています。
既に使われている薬では効果が限られる場合でも、新たな治療法につながる期待が広がっているのです。
例えば、海綿(海の中に生息するスポンジのような生き物)から取り出された成分が、がん細胞の増殖を抑えたり、炎症抑制効果があることが研究から分かってきました。
環境保全:微生物による環境汚染物質の分解
微生物を利用した環境汚染物質の分解技術、いわゆる「バイオレメディエーション」は、環境保全における手法です。この方法は費用が少なく済み、長期的に続けられることから関心を集めています。
この技術が注目を浴びているのは、微生物が自然界に存在する有害物質を分解して害のないものに変える力を持っているからです。
地下水や土壌に含まれる分解しにくい化学物質や重金属など、今までの方法では対処が難しかった汚染にも対応できる特長があります。
バイオテクノロジーの課題

遺伝子治療や遺伝子組み換え食品による国民の誤解
日本では遺伝子組み換え食品(DNAを人工的に操作した食品)に対して「自然でない」「健康に悪影響を与える」といった懸念が根強く残っています。消費者の71.2%が不安を感じているという調査結果も出ています。
また、遺伝子治療(遺伝子を使って病気を治す方法)については、過去に白血病などの副作用が発生した事例が注目されたため、安全性への疑問が今も解消されていないのが現状です。
これらの誤解が広まる背景には、科学的な情報が十分に伝わっていないことや、不適切な形で情報が発信されることが原因だと考えられています。
複数の省庁によって分担されており、非効率な行政運営
日本では各省庁が別々に政策を進めていますので、病院で使う生物医薬品と農業での生物応用技術では異なる規制の仕組みが存在します。これにより、各分野での技術発展のペースに差が生じているのです。
また、地域によって生物科学の研究グループへの支援方法も統一性を欠いており、日本全体としての競争力向上は実現できていません。
日本におけるバイオテクノロジー市場と関連企業

2030年までに日本のバイオ産業全体が15兆円規模に到達予想
経済産業省によると、2030年までに国内外でバイオ経済市場(生物の機能や情報を活用した経済活動の総称)が100兆円規模に達する見通しです。そのうち日本国内市場は15兆円規模になると予測されています。
医療や農業分野では、生物の仕組みを利用した医薬品(バイオ医薬品)や、細胞から組織を再生する医療技術(再生医療)への需要が大きく広がるでしょう。
日本は微生物を使った発酵の技術や、生物のDNA情報を分析するゲノム解析において世界的な強みを持っており、これらを活かした新しい製品開発が着実に進んでいます。
中外製薬株式会社:がん領域を中心とした新薬開発に強みを持つ
中外製薬は2024年から2026年にかけて、栃木県宇都宮工場に約500億円を投資する計画を進めています。この投資により、新しいバイオ医薬品の原料を製造する施設(UT3)と注射薬を生産する建物(UTA)が建設されます。
これらの新施設によって、薬の開発段階から初期の市場向け生産までを一か所で行える体制が強化されることになります。
その結果、自社で開発した医薬品をより早く市場に送り出すことが可能になるでしょう。
武田薬品工業株式会社:国内最大の製薬企業で、医療用医薬品に特化
武田薬品工業株式会社は、バイオテクノロジーの分野で日本を代表する企業です。世界市場での競争力と新しい技術への挑戦によって、長期的な成長を実現しています。
同社は、腸の炎症性疾患の治療薬「エンタイビオ」や、血液の悪性腫瘍(がん)に効く「アドセトリス」といった、高い価値を持つ医薬品を提供しています。
2019年には特殊な薬を専門とするシャイアー社を買収したことによって、患者数が少ない病気(希少疾患)の治療分野での存在感が大きく高まりました。
さらに、成長途上の市場である中国やインドなどでは、それぞれの地域のニーズに合わせた製品供給の仕組みを作り、シェア拡大に取り組んでいます。
まとめ
バイオテクノロジー投資市場は、日本において急速に成長しています。2030年までに日本のバイオ産業は15兆円規模に拡大すると見込まれています。
医療分野では再生医療やバイオ医薬品、農業分野では遺伝子組み換え技術などが発展しており、中外製薬や武田薬品工業といった大手企業が積極的な投資を進めています。
日本は発酵技術やゲノム解析などで世界的競争力を有しており、これらを活かした産業発展が期待されています。
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