コモディティとは?投資初心者でもわかる市場の仕組みを解説

近年、物価上昇(インフレ)から資産を守る方法として、実物資産であるコモディティへの投資が注目されるようになりました。
2021年から2022年にかけて世界中で物価が上昇した時期には、多くの投資家がエネルギー資源や農産物に目を向けました。
しかし、コモディティ市場は天候の変化や国際情勢の緊張(地政学的リスク)、短期的な利益を狙った売買(投機的な動き)で価格が変動しやすいです。
本記事では、コモディティ市場の基本から投資する際の注意点を解説していきます。
コモディティ市場の基本を知ろう

コモディティ市場とは、原材料や農産物の取引所
コモディティ市場は、原材料や農産物など代替可能な資源が取引される場所として、需要と供給の調整機能を担っています。例えば、農家がトウモロコシの収穫量が減るリスクに備えたい場合を見てみましょう。
農家は、先物取引所(将来の価格や数量をあらかじめ決めておく取引の場)で前もって売却契約を結ぶことで、価格変動のリスクを減らせます。
また、製造会社が原材料不足を防ぐために、直物市場(その場ですぐに取引する市場)で必要なものをすぐに購入するというケースもあります。
身近なコモディティの代表例は石油、金、小麦などの農産物
石油はエネルギー供給の中心として、金は価値を保存したり投資対象として、小麦は食料として、私たちの生活に欠かせません。これらが市場で取引されるのは、需要と供給の変化によって価格が日々変動し、価格変動が経済全体に影響を与えるためです。
石油は各国のエネルギー政策や国際的な政治リスクの影響を受けやすく、価格変動はガソリン代や電気料金に直接つながります。
金は経済不安の時期に「安全な資産」として人気が高まり、その価格は経済の状況や通貨の交換レートと深く関連しています。
小麦などの農作物は天候や収穫の量によって供給量が変わるため、その価格変動は私たちが日常で購入する食品の値段に反映されることになります。
コモディティ市場の仕組み(スポット市場と先物市場の違い)
スポット市場は、現物商品をすぐに購入したり売却したりする場所として機能しています。これに対して先物市場では、将来の決まった時点での商品価格を前もって確定させることができます。
このため、価格変動のリスクを避けたい投資家や企業向けです。
スポット市場の特徴は、商品の受け渡しが数日以内に行われ、価格はその時点の需要と供給のバランスで決まります。
一方で先物市場においては、将来の取引価格があらかじめ合意されるので、保管にかかる費用や金利などを考慮した価格が設定されるのが特徴です。
コモディティの値段はどうやって決まるの?
コモディティ市場では、需要と供給が価格形成の基本的な要素です。ただし、中央銀行による金融政策や市場参加者による投機的な動きが加わると、価格の上下の幅や方向性が変化します。
さらに、特定の商品については季節的な要因や保管にかかる費用なども価格に影響を与えています。
2022年のロシア・ウクライナ戦争では、石油や小麦などの供給が制限されたため、これらの商品の価格が急激に上昇しました。
コモディティ投資のメリットと注意点

コモディティはインフレに強い特徴がある
コモディティがインフレに強い理由は、「実物資産」(実際に形がある資産)であり、物価上昇に連動して価値も上がりやすい特性を持つからです。インフレ時には通貨価値が下落する一方、コモディティの価格は需給のバランスや生産コストにより上昇します。
2021年から2022年にかけて世界的な物価上昇(インフレ)が進行した際、石油や天然ガスなどのエネルギー資源や小麦、大豆の価格が大幅に上がりました。
コモディティ投資で気をつけるべきポイント
コモディティ市場は、以下の点で予想が難しい市場と言われています。- 需給バランス
- 地政学的な問題
- 天候の変化
2008年の世界金融危機(リーマンショック)の際には、多くの投資家が株式市場で損失を出す一方で、安全な資産とされる金に投資して利益を得た例があります。
コモディティは、経済が不安定な時期に投資リスクを分散させる手段となることがあります。
コモディティ価格と株式市場の関係

石油・ガス価格の変動がエネルギー関連株に与える影響
原油価格が上昇すると、エネルギー関連企業は収益増加が期待されるため株価が上昇しやすくなります。一方で、価格が下落した場合は収益性が低下し、株価にもマイナスの影響が出やすいです。
そのためエネルギー関連株は、原油市場の動きと強く結びついています。
ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)と呼ばれる原油先物価格とエネルギー分野の株価は、大体において同じ方向に変動する傾向が見られます。
原油価格が非常に高くなる場面では物価上昇(インフレ)への不安が高まり、これに対応するために投資家はエネルギー関連の株へと資金を移動させやすいです。
農作物の価格変動が食品業界の収益に及ぼす影響
農作物の価格は気候変動や世界的な政治リスクなど、さまざまな要因によって変動します。例えば、小麦やトウモロコシといった主要な穀物の価格が高くなるのは、収穫量の減少や各国による輸出の制限が主な原因です。
このような状況により、食品を製造する企業はコストの増加に直面し、利益の割合が下がってしまいます。
2022年から2024年にかけて、小麦やトウモロコシの世界的な価格が急に上がった時期には、多くの食品メーカーが自社製品の値上げを行いました。
また、農業に関連する株式や肥料関連の株式が一時的に価格上昇したものの、その後は需要が落ち込んで調整期間を迎えています。
金属価格の変動が製造業・建設業・IT企業に与える影響
金属価格は供給不足や地政学的リスク(国際的な政治情勢に関わるリスク)、需要増加などの要因で変動しやすく、影響が経済全体に広がります。製造業や建設業は金属を大量に使用するため、価格変動が直接的なコスト増減を引き起こしやすいです。
また、IT企業も電子部品に必要な希少金属(レアメタル)などの価格高騰による間接的な影響を受けることがあります。
製造業では鉄鋼やアルミニウム、銅などが主要な原材料です。
これらの金属価格が高騰すると、製品の製造コストが上昇し、利益率が低下してしまいます。
まとめ
コモディティとは、石油や穀物など、品質に大きな違いがなく互いに代替できる基礎的な商品や資源のことです。コモディティ市場では、以下の要因によって価格が変動しやすいです。
- 需要と供給のバランス
- 世界各地の政治的緊張
- 各国の金融政策
その変動は株式市場や産業全体に大きな影響を与えることがあります。
将来的には気候変動や国際情勢の変化によって価格が大きく変わる可能性があるため、初めは関連企業の株式を通じた間接的な投資から始めると良いでしょう。
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