トランプ氏の通商政策が世界経済と日本企業に与える影響を解説

トランプ氏の通商政策は「米国第一主義」の理念のもと、自国産業保護を目的とした関税引き上げを中心とする経済戦略です。
 
一方で、物価上昇や世界経済の混乱を引き起こしています。
 
日本企業にとっては、自動車産業への追加関税や米中対立による部品調達網の分断が深刻な課題となっています。
 
本記事では、トランプ氏の通商政策がグローバル経済に与える影響をわかりやすく解説します。
 

「米国第一主義」自国産業を守るための輸入制限

トランプ政権が輸入制限を導入した主な理由は、国内産業の競争力低下や雇用喪失への対応です。
 
鉄鋼やアルミニウム産業では、海外から入ってくる安い製品との価格競争に苦しんでいました。
 
「工場の閉鎖」や「失業者の増加」といった深刻な問題が次々と発生していたからです。
 
そのためトランプ政権は、1962年通商拡大法232条(国の安全保障に関わる重要な産業が危機に瀕している場合、大統領が関税を上げられる)を実装しました。
 
結果、2018年から以下の措置が取られています。
 
 
注目すべき点として、2025年にはアルミニウム製品への関税が25%まで引き上げられることになっています。
 

トランプ氏による関税引き上げの具体的な内容

 

メキシコ、カナダ、中国に対して追加関税

2025年2月1日、トランプ大統領が近隣国や中国からの輸入品に対して新たな関税を課しました。
 
その理由は、国境問題や薬物取引などの国家的緊急事態への対応とされています。
 
メキシコとカナダは、不法移民や違法薬物(フェンタニル)の流入を抑制するため、中国については合成オピオイド供給網の問題に対処するためです。
 
メキシコとカナダからの輸入品には25%の関税が課される予定であり、中国からの輸入品には10%の追加関税が適用されました。
 
関税政策には米国内での生産を増やし、貿易の不均衡を改善する狙いもあるようです。
 

公平な競争環境を目指すため「相互関税」の導入

世界中の国々が自国の産業を守るために、様々な「壁」を作っています。
 
具体的には、高い関税を設定したり、目に見えない規制(専門用語で非関税障壁)を設けたりしている状況です。
 
アメリカ製品が海外市場で苦戦を強いられている一方で、海外の製品がアメリカ市場では優位に立っている、アンバランスな状況が生まれています。
 
そこで出てきたのが「相互関税」です。
 
「相互関税」とは、相手国が課している関税と同じ率をこちらも課す、シンプルな仕組みです。
 
トランプ大統領は相互関税について、「美しくシンプルな制度」という表現を使っています。
 

貿易政策が経済に与える影響

 

アメリカ国内:物価上昇と経済成長の減速

アメリカの貿易政策について、関税を引き上げる政策が、私たち消費者の生活にも影響しています。
 
関税引き上げによる影響は以下の通りです。
 
 
2025年に予定されている通商政策では、中国からの輸入品に最大60%もの関税をかけることが検討されています。
 
このような政策は輸入価格を直接押し上げるため、消費者物価が前年比1.2%以上増加する可能性があるでしょう。
 
また、関税によるコスト増加は企業活動にも波及し、中期的にはGDP成長率を0.4~1.0%押し下げると試算されています。
 

世界経済への打撃:貿易量の減少と各国との対立

関税が上がると、国と国との間で物やサービスのやり取り(貿易)が減ってしまいます。
 
厄介なのは、お互いに「やられたらやり返す」という報復の連鎖が始まってしまうことです。
 
これは保護主義と呼ばれる考え方ですが、結果として国際協力の関係が壊れ、世界経済が分断されてしまう危険があります。
 
国際通貨基金(IMF)の試算によると、お互いの国による報復措置は世界の貿易量が25%も減少すると示唆されています。
 
そのため、世界全体の経済規模(GDP)が6~7%も縮んでしまうでしょう。
 
実際に起きた例として、米中の貿易摩擦があります。この影響は両国だけでなく、世界中に広がっていきました。
 
 
関税の引き上げは、企業の投資意欲を下げたり、世界中に張り巡らされた生産・供給の網(サプライチェーン)を寸断したりする恐れがあるんです。
 

通商政策により日本企業が直面する課題

 

米中対立が部品調達網に与える影響

日本企業の多くは、アメリカと中国の両方とビジネス上のつながりを持っています。
 
アメリカと中国、2つの国が対立していると、部品の調達から製品の販売まで、企業活動全体に影響が出てしまうんです。
 
とりわけ注目されているのが、2025年に向けた動きです。
 
中国からの輸入品に対して、今までより10%高い追加課税が検討されています。
 
そのため、中国から部品を仕入れている日本企業にとっては、製品のコストが上がってしまうことにもつながってしまします。
 
また、最近では「デカップリング」現象が進んでいます。
 
「デカップリング」とは、アメリカと中国の経済が徐々に離れていくことを指す言葉です。
 
この流れを受けて、アメリカ向けの製品を作る際に、中国への依存度を下げようという動きが強まっています。
 
そのため、多くの日本企業は、次のような対策を考える状況に直面しています。
 
 
このように、国際情勢の変化に合わせて、企業も柔軟に対応していく必要が出てきているんです。
 

自動車産業:新たな関税導入のリスク

トランプ政権が2025年に復活して以来、日本の自動車業界で懸念が広がっています。
 
理由は、最大25%もの追加関税が検討されているからです。
 
トヨタやホンダの日本自動車メーカーは、アメリカで多くのお客様に支持されているんですが、追加課税が実現すると、販売価格を見直さざるを得なくなってしまいます。
 
次に生産体制の問題があります。
 
メキシコやカナダの工場で作られた車にも同じように関税がかかる可能性があります。
 
そうなると、「どこで車を作るのが最適なのか」という課題に直面するでしょう。
 
また、25%関税が導入されると、日本のGDP(国内総生産)が0.2%ほど下がる可能性があります。
 

まとめ

今回は、トランプ氏の通商政策がグローバル経済と日本企業に与える影響について解説しました。
 
トランプ政権の「米国第一主義」に基づく保護主義的な通商政策は、世界経済に影響を及ぼしています。
 
具体的には以下の通りです。
 
 
日本企業にとっては、米中対立の深刻化によるサプライチェーンの再編や、自動車産業への追加関税によるコスト増加が懸念されています。
 
その結果、日本のGDPを0.2%押し下げる可能性も指摘されています。
 
このような状況下では、企業は生産拠点の分散化やサプライチェーンの見直しを積極的に進め、リスク管理を強化することが重要となるでしょう。
 
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