サステナブルファッションとは?業界が直面する4つの課題を解説

サステナブルファッションとは「環境や社会に優しいファッション」のことです。
 
洋服を作るときから売るときまで、地球環境への負担を減らしながら、作り手にもきちんと配慮する考え方として知られるようになりました。
 
最近は、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まっていることもあって、世界中で広がりつつある状況です。
 
しかし、アパレル産業にはまだまだ課題があり、「服1着を作るのに大量の水を使ってしまう」「染色などで使う化学物質が環境を汚してしまう」などの問題があります。
 
本記事では、これらの課題に対して、今、世界中でどんな取り組みが行われているのか、私たちに何ができるのかを、具体的な例を交えながらわかりやすく解説していきます。
 

サステナブルファッションとは? 

環境省が定める「持続可能な繊維産業」とは?

環境省による「持続可能な繊維産業」は、服が作られてから使い終わるまでの過程で、できるだけ環境に優しい方法を取り入れていく考え方です。
 
環境省と経済産業省が一緒になって、「
繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」を作りました。
 
具体的には、以下の工夫が含まれています。
   
 
全部で11項目にわたる環境配慮設計が求められています。
「出典:環境配慮設計ガイドラインの概要|経済産業省
 

アパレル産業は世界第2位の環境汚染産業

国連貿易開発会議(UNCTAD:国際的な貿易や開発について話し合う国連の組織)の調査で、驚くような数字が明らかになっています。
 
ファッション産業は毎年930億立方メートルもの水を使用しており、これは東京ドーム約75,000個分の水に相当します。
 
さらに気になるのが、世界中の工業活動による水質汚染の約20%が、服の染色や加工から生じている事実です。
 
また、ファッション産業から出る温室効果ガスは年間で12億トンにも達します。
 
これは、飛行機や船での国際輸送を全部合わせた量よりも多いです。
  参照:国際連合広報センター

サステナブルファッションが抱える4つの問題点

① 水資源の大量消費(デニム1本で7,500リットル)

普段何気なく着ているデニムの製造には、想像以上の水が使われており、主に2つの工程で大量の水が必要になります。
 
まずは、原料となる綿花の栽培です。
 
綿花は水を多く必要とする植物で、畑に大量の水を引く必要があります。
 
次に、デニムならではの美しい藍色と、独特の風合いを出す染色や洗浄の工程でも、水が必要です。
 
国連貿易開発会議(通称UNCTAD)の調査によると、デニム1本を作るのに約7,500リットルもの水が必要です。これは、普通の人が7年かけて飲む水の量に相当します。
 

② 化学物質による環境汚染

服を作るための工程では、洋服を染めたり、雨に強くしたりする過程で、大量の化学物質が使われています。
 
また、化学物質の中には、自然界でなかなか分解されにくいものもあり、適切な処理をしないまま排出されている状況です。
 
アルキルフェノール類(環境ホルモンの一種)や有機フッ素化合物(撥水加工などに使用)といった物質が含まれています。
 
これらの物質は、人体への影響も懸念されていて、発がん性やホルモンバランスへの影響が指摘されています。
 

③ CO₂排出量(年間約90,000kt)

財務省の調査結果によると、1着の服を作るだけで約25.5kgものCO₂が排出されています。
 
これは、500mlのペットボトル255本分の製造時のCO₂排出量と同じくらいです。
 
とりわけ気になるのが、服の生産段階でのCO₂排出です。全体の約90%もの排出が生産段階時点で起こっています。
「出典:サステナブルファッションの動向について |財務省
 
具体的には、よく使われているポリエステルなどの合成繊維です。
 
私たちの生活に馴染み深い素材ですが、その製造過程ではかなりのエネルギーを使っており、大量のCO₂が発生してしまいます。
 

④ マイクロプラスチックによる海洋汚染

合成繊維(ポリエステルやナイロン)は洗濯したり着用したりすると、目に見えない細かい繊維(マイクロファイバー)が出ていってしまいます。
 
そのため、下水処理場でも完全には取り除けないので、そのまま川や海に流れ着いてしまう状況です。
 
驚くことに、海にあるプラスチックごみの35%以上が、私たちの着ている服から出たものだとわかっています。
 

サステナブルファッションの最新開発動向

植物由来の新素材開発

私たちの身の回りにある製品の多くは、石油から作られています。従来の石油由来素材は、製造時や廃棄時に多大な環境負荷をもたらしてきました。
 
そんな中で、今注目を集めているのが植物由来の素材です。
 
「PlaX™(プラックス)」という植物由来の次世代合成繊維は、サトウキビから作られる「ポリ乳酸」に、独自技術で開発した添加剤を組み合わせることで、新しい素材が誕生しました。
「出典:Bioworks株式会社
 
「PlaX™(プラックス)」の具体的な特徴は以下の通りです。
   
 
環境に優しい素材は、どこか性能が劣るんじゃないかと思われがちですが、PlaX™は環境への配慮と実用性の両立を目指して開発された素材です。
 

革の代替品(果物・菌類由来)

天然皮革(動物の革)や合成皮革の代わりに、果物や菌類から作る新しい革の代替品が注目を集めています。
 
キノコから作る革(マッシュルームレザー)は、土に返る性質があるので、環境にやさしく後処理に困らないのが特徴です。
 
また、果物の革(アップルレザー・マンゴーレザー)は、ジュースを作った後の搾りかすを使って作ります。
 
注目なのが、アメリカの企業が開発した「
Reishi™」や「Mylo™」という素材です。
 
キノコの菌糸体から作られているんですが、なんと牛革と同じくらいの丈夫さがあり、生産期間が短くて大量生産にも適しています。
 

サステナビリティ認証事業を開始した伊藤忠商事の成長性は?

伊藤忠商事は2024年に「Re-Creation(リクリエーション)」プロジェクトを立ち上げ、ファッションアイテムの認証事業を開始しました。
 
認証事業は、ファッションアイテム一つ一つに、どこでどのように作られたのか、環境や社会にどんな配慮がされているのか「認証」をつけていく取り組みです。
「出典:伊藤忠ファッションシステムが独自のサステナビリティ認証をスタート
 
具体的には、以下の特徴があります。
   
 
こういった取り組みによって、私たち消費者は服を選ぶときに、環境への影響や作られ方まで知ることができるようになったのです。
 

まとめ|地球環境と社会に優しい選択が「おしゃれ」の新基準

「サステナブルファッション」は、おしゃれを楽しみながら環境にも優しい、新しいファッションの形です。
 
従来のファッション産業には以下の課題がありました。
   
 
しかし、最近では植物から作られた新素材や、キノコから作られた革の製品まで登場しています。
 
その結果、従来の素材と比べて二酸化炭素の排出を41%も削減、水の使用量に至っては、90%も削減できています。
 
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