カーボンクレジット市場とは?企業の成長性と投資戦略を解説
世界的な環境意識の高まりを背景に市場は急成長しており、2028年には約1.5兆ドル規模まで拡大すると予測されています。
2023年10月に開設された日本の市場では、取引量の少なさや価格の透明性不足といった課題に直面しています。
本記事では、投資家に向けてカーボンクレジット市場の仕組みや投資戦略、リスクについて分かりやすく解説していきます。
ぜひ、最後までお読みください。
カーボンクレジットとは?
カーボンクレジットとは、企業が二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出量を減らした分を『クレジット』として売り買いできる制度です。このような仕組みが作られた目的は、企業間で効率的にCO2削減を進めるために生まれました。
自社で二酸化炭素の排出を減らすことが難しい企業でも、他の会社が削減した分(クレジット)を購入することで、排出した分を埋め合わせることができます。
これにより、地球温暖化対策へ間接的にでも参加できるようになりました。
カーボンクレジットの市場構造
世界的な環境意識の高まりを背景に、カーボンクレジット市場は急速な発展を遂げています。この章では以下の2点に焦点を当てて解説します。
- グローバル市場の現状と規模
- 取引の仕組みと価格形成
グローバル市場の現状と規模
カーボンクレジットの市場調査によれば、2028年までに市場規模は年間成長率29.4%という急成長を遂げ、1兆4,735億1,000万米ドルと予測されています。この成長を後押ししているのが、世界各国で強化されるカーボンニュートラルに向けた規制です。
パリ協定の目標達成に向けて、各国政府や企業は温室効果ガス削減への取り組みを加速させており、カーボンクレジットは重要な手段として注目を集めています。
日本においても、2023年10月に東京証券取引所でカーボンクレジット市場が開設され、本格的な取り組みが始まりました。
取引の仕組みと価格形成
カーボンクレジットの取引制度は主に2つの方式があります。1つは「ベースライン&クレジット制度」です。
これは、企業が実際に削減した排出量と、あらかじめ設定した基準値との差分をクレジットとして認証します。
2つ目は「キャップ&トレード制度」で、政府が定めた排出上限の範囲内で、企業間の排出枠の売買を認める仕組みです。
カーボンクレジット市場では、クレジットを必要とする企業と、削減目標を上回って達成した企業との間で、透明性の高い取引が行われています。
2023年の取引実績を見ると、代表的なJクレジット(再エネ電力)の価格は1トンあたり2,600円から3,900円の範囲で推移しました。
カーボンクレジットの企業価値と株価への影響
カーボンクレジットは、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)評価を高め、結果として企業価値や株価にも好影響を与えることが分かってきています。
ESG評価の向上は、環境意識の高い投資家からの注目を集め、企業の成長性や将来性への期待を高めるでしょう。
世界的にESG投資は急速に拡大しており、2024年までに運用資産総額は50兆ドルを超えると予測されています。
このようななかで、カーボンニュートラルや脱炭素化への具体的な取り組みは、投資家が企業を評価する上で重要な指標です。
具体的には、トヨタ自動車の「トヨタ環境チャレンジ2050」です。
トヨタ自動車は2035年までに新車のCO2排出量を50%以上削減する目標を掲げ、
電気自動車の開発強化や、水素技術の実用化など、具体的な施策を次々と打ち出しています。
カーボンクレジット投資|個人投資家の参入方法
カーボンクレジット投資では、個人投資家でも株式投資やETFを通じて気候変動対策に貢献しながら収益機会を得ることが可能です。具体的な参入方法について、以下で詳しく解説します。
直接投資(関連企業の株式)
カーボンクレジット市場への個人投資家の参入方法として、関連企業の株式購入が挙げられます。この方法であれば、環境保護への貢献と経済的リターンの両立が可能です。
投資対象となる企業は、主に以下の3つのカテゴリーに分類されます。
- 再生可能エネルギー事業を展開する企業
- 脱炭素技術の開発に特化した企業
- カーボンオフセットサービスを提供する企業
間接投資(ETF、投資信託)
カーボンクレジット市場に個人投資家が参入するには、ETF(上場投資信託)や投資信託を通じた間接投資も有効な選択肢です。この方法により、専門知識が必要な直接取引を避けつつ、今後の成長が期待される環境投資市場に参加できます。
ETFは証券取引所で株式のように売買できるため、高い流動性を確保しながら、少額から分散投資が可能です。
また、投資信託と比べて手数料が低く、取引時間中であればいつでも売買できる利点があります。
具体的にカーボンクレジットETFは、
世界各地の温室効果ガス排出削減プロジェクトや、クレジット先物契約の価格に連動して運用されています。
これにより、投資家は世界的な環境保護の取り組みに間接的に貢献しながら、市場の成長による収益機会を得ることができるでしょう。
日本国内では「MAXISカーボン・エフィシェント日本株上場投信」が代表的な商品として挙げられます。
カーボンクレジット投資における市場リスク
カーボンクレジット投資には「価格変動」と「流動性」の市場リスクが2つ存在します。カーボンクレジット市場は、比較的新しい市場であるため価格の不安定性が高いのが特徴です。
日本のJ-クレジット市場では2023年10月から12月の間に価格が2600円から3900円まで大きく変動しました。
この価格変動は、「需要と供給のバランス」「政策の影響」「市場参加者の行動」など複数の要因が絡み合って引き起こされています。
そして、J-クレジット市場が抱えるもう1つが、取引の少なさです。
市場での売り買いが活発でないため、必要な時にすぐにクレジットを売買できない可能性があります。
これは、データからも明らかです。
2024年10月までの取引量を見ると、累計でも52万トンのCO2削減量分しか取引されておらず、1日あたりでは平均約2,129トンにすぎません。
出典:JPX日本取引所グループ|カーボン・クレジット市場開設1周年を迎えて
このような低い流動性は、大口取引の際に市場価格を大きく左右する可能性があり、投資家が望む価格での売買が困難になることがあります。
まとめ
今回はカーボンクレジットについて解説しました。カーボンクレジット市場は、企業の環境負荷削減を促進する新しい金融市場システムです。
2028年までに年間29.4%の成長率で1兆4,735億ドル規模まで拡大すると予測され、
日本では2023年10月の東証市場開設により、個人投資家にも参入機会が広がっています。
今後はESG投資の世界的な拡大にともない、企業価値評価の指標として役割が強まると考えられます。
個人投資家は、カーボンクレジット関連企業の株式やETFへの投資を検討することで、環境保護への貢献と経済的リターンの両立を目指すのがおすすめでしょう。
このような成長市場で収益を上げるためには、プロの目線で銘柄を選定することが重要です。
元ひまわり証券社長で、日経平均4万円到達を的確に予測した北川氏の「無料投資講座」では、成長銘柄の見極め方から具体的な投資タイミングまで詳しく解説しています。