セクターローテーションとは?セクターの基本や仕組みを徹底解説

投資家のなかでは、景気変動に合わせて有望なセクターに資金をシフトする「セクターローテーション」が注目されています。
 
しかし、適切なタイミングでの実行は難しく、多くの投資家が悩んでいます。
 
この記事では、セクターローテーションの基本から実践方法、注意点まで詳しく解説します。

景気サイクルの各段階で有望なセクターや、ETFを活用した投資戦略も紹介。
 
初心者から経験者まで、効果的な資産運用を目指す人はぜひ参考にしてください。
 

セクターローテーションとは

セクターローテーションとは、経済サイクルに合わせて成長が期待できる産業セクターへ投資をシフトする戦略です。
 
経済サイクルの各段階では優位性を持つ産業セクターがそれぞれ異なります。

投資家は経済サイクルの変化を見極め、ポートフォリオを調整することでパフォーマンスを向上させられます。
 
景気回復期には自動車、建設、鉱業などのサイクリカルセクターが好調です。
 
一方、景気後退期には医療、食品、公益事業などのディフェンシブセクターが安定します。
 
2020年のコロナショック後、世界経済の回復にともないテクノロジーセクターから景気敏感セクターへの資金シフトが起こりました。
 
2022年にはインフレ加速、特にエネルギー価格の大幅上昇により、エネルギーセクターへの投資が好調でした。
 

セクターローテーションの仕組みとセクターの関連性

セクターローテーションは、経済活動の周期的な変動をあらわし、一般的に4つの段階に分けられます。
 

  1. 不況期(底)
  2. 回復期(上昇)
  3. 好況期(頂点)
  4. 後退期(下降)

 
これらの各段階は、経済指標の変化によって特徴づけられます。
 
また、経済は通常11の主要セクターに分類されます。景気循環の各段階で異なる影響を受けます。
 

11個の主要なセクター

米国株式市場の11主要セクターは、Global Industry Classification Standard(GICS)に基づき分類され、企業の業種やテーマごとにグループ化されています。
 
11のセクターは、投資家が市場動向を把握するための指標として利用されます。
出典:岡三オンライン|景気循環とセクターローテーション   11のセクターは、経済サイクルの異なる局面で特徴的な動きを示します。

経済状況に応じて適切なセクターローテーション戦略を採用することが重要です。
 

不況期|景気が悪化し企業の売上や消費が大幅に落ち込む時期

経済が低迷する不況期には、多くの企業の成長が鈍化します。
 
しかし、この厳しい環境下でも比較的安定した業績を維持できるセクターが、生活必需品、公益事業、ヘルスケアなどのディフェンシブセクターです。
 
不況期には消費者の財布の紐が固くなり、贅沢品への支出が抑えられます。

一方で、日々の生活に欠かせない商品やサービスへの需要は大きく変動しません。
 
このため、以下のような分野の企業は収益を維持しやすい傾向にあります。
 

  1. 生活必需品:食品や日用品などの基本的な消費財は、景気の良し悪しに関わらず一定の需要がある。

 

  1. 公益事業:電気、ガス、水道などのインフラサービスは、生活の基盤として欠かせないため、景気変動の影響を受けにくい。

 

  1. ヘルスケア:医療サービスや医薬品は、人々の健康に直結するため、不況下でも需要が持続します。

 

回復期|景気が低迷から回復し成長期に移行する時期

経済の回復期には、企業や消費者の信頼感が高まり、投資や消費が活発化します。
 
この時期に注目されるのが資本財、情報技術、通信サービスといったセクターです。

これらは景気循環に敏感に反応する「シクリカルセクター」と呼ばれ、回復期に好調となる傾向があります。
 
資本財:企業が景気の上向きを見込んで設備投資を増やすため、需要が高まります。
 
情報技術分野:企業の競争力強化や効率化を目指した新技術の導入やデジタル化の加速により、関連製品やサービスへの需要が増加します。
 
通信サービス:経済活動の活発化にともない、より高度な通信インフラへのニーズが高まります。
 

好況期|企業の売上が増加し、従業員の給与も上昇する時期

経済が好調な時期には、一般消費財やサービス、資本財、情報技術などのセクターが恩恵を受けやすいです。
 
消費者の支出が増え、企業の投資意欲が高まるためです。
 
好況期は、経済全体が成長し、財布の紐が緩む時期といえるでしょう。

消費者は余裕ができた分、日用品以外の商品やサービスにもお金を使うようになります。

同時に、企業も業績が上向くため、新しい設備への投資や最新技術の導入に積極的になります。
 
具体的に見てみると以下のとおりです。
 

  1. 一般消費財・サービス分野では、人々の収入増加に伴い、レジャーや外食など、いわゆる「ぜいたく品」への需要が高まります。

 

  1. 資本財セクターは、企業が生産能力を拡大しようと設備投資を増やすため、好調になります。

 

  1. 情報技術分野も、デジタル化の波に乗って企業が新しい技術を積極的に取り入れようとするため、成長が期待できます。

 
実例として、2008年の世界金融危機後の米国経済の回復過程を見ると、最初に金融セクターが持ち直し、製造業や消費関連産業が続いて回復していきました。
 

後退期|企業の売上や消費が減少し、株価が下落する時期

景気後退期には、「防衛的セクター」が注目を集め、生活必需品、ヘルスケア、公益事業などの分野が含まれます。
 
経済が低迷すると、支出を抑え、企業の売上も落ち込む傾向があるためです。

しかし、日々の生活に欠かせない商品やサービスを提供する業界は、この状況下でも比較的安定した需要を維持できます。
 
例えば、生活必需品セクターは食品や日用品を扱うため、景気に左右されにくい特徴があります。

同様に、ヘルスケアセクターも医療サービスや医薬品の需要が継続的であるため、安定性が高いでしょう。
 
電力や水道などのインフラを提供する公益事業セクターも、必要不可欠なサービスを提供しているため、景気後退時でも安定した収益を期待できます。
 

セクターローテーションを使った投資方法

セクターローテーションの投資戦略には「投資信託」や「ETF」が適しています。

これらは経済状況に応じて異なる産業への投資を柔軟に調整できるため、リスク分散とリターン最大化が可能です。
 
ETFはとくに有効で、複数銘柄への分散投資によるリスク軽減に加え、リアルタイム取引が可能です。

また、低コストで透明性が高いため、効率的な資産運用ができます。
 
例えば、景気回復期には機械や自動車などの景気敏感セクターのETFを選ぶことで、経済成長の恩恵を直接的に受けられる可能性が高まります。
 

セクターローテーションの注意点

セクターローテーションの難しさは、景気判断の複雑さと言えるでしょう。
 
主な要因は以下のとおりです。
 
 
失敗例として、2000年代初頭のITバブル崩壊時、テクノロジーセクターへの過度の集中投資が大きな損失を招いたことが挙げられます。
 
この戦略を実施する際は、従来の景気サイクルだけでなく、複合的な分析が必要です。
 
また、特定のセクターに偏らない柔軟な分散投資も検討しましょう。
 

まとめ

セクターローテーションは、景気サイクルに応じて最適なセクターに投資をシフトする戦略です。
 
景気の4段階(不況期、回復期、好況期、後退期)に応じて、11の主要セクターのパフォーマンスが変動します。
 
例えば、不況期にはディフェンシブセクター、好況期には一般消費財やサービスセクターが好調となる傾向があります。
 
おすすめの投資戦略としてはETFや投資信託を活用することで、効率的なセクターローテーションが可能となります。
 
投資家は、マクロ経済指標や金融政策など多角的な視点から分析し、柔軟な戦略を立てましょう。
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