チャート分析入門:トレンド系で見る代表的な移動平均線の使い方
株式投資でチャート分析を始めたばかりの⽅なら、こんな悩みを抱えているかもしれません。
結論から⾔うと、トレンド系指標を理解し、適切に使いこなすことが、株式投資で利益を上げるカギとなります。
今回の記事では、代表的なトレンド系指標である移動平均線について、その種類や使い⽅、メリット・デメリットを詳しく解説します。
トレンドの種類や⾒極め⽅、売買シグナルについても触れ、トレンド系指標の本質を理解できるでしょう。
トレンド系とは?
トレンド系指標とは、金融市場における価格の全体的な方向性(トレンド)を見極めるために使用されるテクニカル分析の手法です。これらの指標は、トレンドの持続性や転換点を把握することで、投資家が適切な売買タイミングを見つけるのに役立ちます。
トレンド系指標には、移動平均線、ボリンジャーバンド、一目均衡表などがあり、それぞれが異なる方法でトレンドを視覚的に示します。
トレンドの種類(上昇トレンド、下降トレンド、横ばいトレンド)
トレンドには、上昇トレンド、下降トレンド、横ばいトレンドの3種類があります。それぞれの特徴と見極め方を紹介します。
上昇トレンド
出典:TradingView 上昇トレンドは、一定期間にわたって株価が上昇し続ける傾向を指します。
投資家が株価の上昇を期待して買いを続けることで形成され、チャート上で安値と安値を結んだ直線(上昇トレンドライン)によって視覚的に確認できます。
上昇トレンドが形成される理由は、投資家の心理や市場のファンダメンタルズ(経済指標や企業業績など)に基づく期待の高まりです。
これにより、買い注文が増加し、株価が上昇します。
下降トレンド
出典:TradingView下降トレンドは、一定期間にわたって株価や相場が下落し続ける状態を指します。
投資家の売り圧力が買い圧力を上回ることで形成され、連続する高値および安値が前の高値・安値よりも低くなることが特徴です。
下降トレンドが発生する主な理由は、悪いニュースや経済指標の悪化、企業業績の低迷、不祥事などが投資家の売り意欲を高めるためです。
価格の下落にともない、出来高も減少が多く、これが下降トレンドの継続を示唆します。
横ばいトレンド(レンジ相場)
出典:TradingView 横ばいトレンド(レンジ相場)とは、価格が一定の範囲内で上下を繰り返し、明確な方向性がない相場のことを指します。供給と需要が均衡しているため、価格は大きく動かず、一定の値幅で推移します。
レンジ相場では、価格が一定の高値と安値の範囲内で変動します。
これを確認するために、レジスタンスライン(高値を結んだ線)とサポートライン(安値を結んだ線)を引くことが一般的です。
トレーダーは、レンジ相場では大きな値幅を狙うことが難しいため、価格がレンジの上限に近づいたら売り、下限に近づいたら買いという逆張りの取引方法を用いて、小さな利益を積み重ねることが基本となります。
代表的なトレンド系指標(移動平均線)
トレンド系のなかでも、代表的なのが移動平均線です。移動平均線は、一定期間の価格の平均を結んだ線で、相場のトレンドを視覚的に把握するためのテクニカル指標です。
価格の変動を平滑化し、トレンドの方向性や強さを判断するのに役立ちます。
単純移動平均線(SMA)
単純移動平均線(SMA)は、一定期間の終値の平均を計算して線で結んだ移動平均線の一種です。価格の変動を平滑化し、トレンドの方向性を視覚的に把握するための基本的なテクニカル指標として使用されます。
単純移動平均線(SMA)は、指定された期間の終値を均等に扱い、その平均を計算するシンプルな方法で求められます。
例えば、5日間のSMAは、直近5日間の終値の合計を5で割ることで算出されます。
SMAは価格のブレをならし、市場の全体的な動向を把握しやすくします。
ただし、直近の価格変動に対して鈍感であるため、トレンドの転換点を見逃す可能性があります。
しかし、これはSMAの特性であり、長期的なトレンドを把握するには有利です。
指数平滑移動平均線(EMA)
指数平滑移動平均線(EMA)は、移動平均線の一種であり、直近の価格データにより大きな重みを付けて計算されます。これにより、単純移動平均線(SMA)よりも価格の変動に敏感に反応し、トレンドの転換点を早期に捉えることができます。
EMAは、最初の値はSMAと同じ計算方法を用いますが、2日目以降は前日のEMAに平滑化定数を掛けた値を加えることで算出されます。
この計算方法により、最新の市場動向を迅速に反映することができます。
ゴールデンクロスとデッドクロス
ゴールデンクロスとデッドクロスは、移動平均線を用いたテクニカル分析の重要な指標であり、トレンドの転換点を示すシグナルとして広く利用されています。ゴールデンクロスは、短期移動平均線が長期移動平均線を下から上に突き抜ける現象を指し、価格の上昇トレンドを示す買いシグナルです。
一方、デッドクロスは、短期移動平均線が長期移動平均線を上から下に突き抜ける現象を指し、価格の下降トレンドを示す売りシグナルとされます。
ただし、これらのシグナルは「ダマシ」となることがあるため、他の指標と併用することで信頼性を高める必要があります。
※「だまし」とは、テクニカル指標が示す売買シグナルが実際の価格動向と反対の動きをする現象を指します。
例えば、買いシグナルを発したにもかかわらず、価格が下落する場合を指します。
トレンド系(移動平均線)のメリット
トレンド系の代表的なテクニカル指標である移動平均線は、相場のトレンドを視覚的に捉えるのに役立ちます。以下で詳しくメリットを紹介します。
トレンドの方向性が分かる
移動平均線は、相場のトレンドの方向性を視覚的に把握するのに役立ちます。これにより、上昇トレンドや下降トレンドを簡単に認識することができます。大きなトレンドの流れが視覚的につかみやすい
移動平均線は、価格の変動を滑らかにし、全体的なトレンドの流れを視覚的に捉えやすくします。これにより、投資家は長期的なトレンドを見極めやすくなります。
売買タイミングの計測がしやすい
移動平均線は、ゴールデンクロスやデッドクロスといった売買シグナルを提供し、投資家が適切なタイミングで売買を行うのに役立ちますトレンド系(移動平均線)のデメリット
移動平均線は、トレンドを可視化し、投資判断の指標として広く用いられていますが、いくつかのデメリットがあります。ここでは、移動平均線を利用する上で注意すべき2つのポイントを紹介します。
ダマシが発生しやすい
特に指数平滑移動平均線(EMA)や加重移動平均線(WMA)は、直近の価格変動に敏感に反応するため、誤ったシグナル(ダマシ)が発生しやすいです。
過去のデータに依存している
移動平均線は過去の価格データを基に計算されるため、突発的な出来事や急激な市場変動には対応しづらいです。例えば、リーマンショックやコロナショックのような予測不可能なイベントには無力です
まとめ
今回は、トレンド系指標の中でも、とくに代表的な移動平均線に焦点を当てて解説しました。トレンド系指標は、価格の方向性を捉えるのに役立つテクニカル分析ツールです。
代表的な指標である移動平均線は、上昇・下降・横ばいトレンドを視覚的に把握し、ゴールデンクロスやデッドクロスで売買シグナルを提供します。
ただし、ダマシには注意しましょう。
トレンドを理解し、適切なタイミングで売買することで、株式投資の成果を上げられます。
まずは移動平均線を活用し、トレンドを読み取る力を身につけることから始めてみてください。